電子ブック(デジタルブック)は、スマートフォンやタブレットを利用して読むことができる冊子です。紙を使用しないため印刷コストを削減でき、デジタルならではの動画や音声の活用もできます。そのため、情報の伝達がしやすく、訴求力が高いことが特徴です。
ここでは電子ブックの全体像や実際に作成するために知っておくべきことを紹介します。
電子ブックとは
電子ブックを厳密に定義するルールなどはありませんが、一般的にWebサイトで公開するメディアのことを「電子ブック」と呼びます。パソコンやスマートフォン、タブレットなど、多様なデバイスで閲覧することが可能です。
電子ブックの種類
電子ブックは役割や目的に応じて、分類できます。
カタログ・パンフレットなどの集客ツール
電子ブックはカタログやパンフレットとして利用できます。主に製品紹介などを目的としており、集客のために活用するものです。大学や高校の学校案内、量販店やスーパーのセール情報を知らせるチラシなどを電子ブックにするケースもあります。
マニュアルなどユーザー満足向上ツール
マニュアルを電子ブックにすることで、製品を利用する人の利便性を高めることができます。また企業によるものだけでなく、自治体の市報などを電子ブックとして公開することで、アクセスしやすいものとしています。
小説作品などの電子書籍
電子ブックと似た言葉に、AmazonのKindleを代表する「電子書籍」があります。電子書籍は、閲覧するために専用ソフトやデバイスが必要です。電子ブックが情報の提供などを目的としていることに対し、電子書籍は一般書籍と同様に販売を主な目的としています。
電子ブックのメリット
電子ブックには、従来の印刷物では実現できなかったメリットがあります。デジタルコンテンツならではの特徴を確認しておきましょう。
印刷コスト削減
紙を使用しないので、印刷コストを削減できます。インクや用紙、製本などさまざまな費用をデジタル化することで抑えることが可能です。また、印刷物のように色やレイアウトの仕上がりがオンラインで完結するため、材料費だけでなく制作過程で発生するコストも削減できます。
在庫切れがない
デジタル製品なので、在庫がなくなりません。例えば無料配布物などは、増刷するたびに費用が発生しますが、電子ブックの場合は追加で予算が必要になることはありません。一度でも完成してしまえば、閲覧数に関係なく公開状態を維持できます。
場所を選ばずに配布できる
電子ブックはWebサイトで公開するものなので、SafariやGoogle ChromeなどのWebブラウザーさえあれば、どこにいても閲覧できます。唐突にパンフレットなどが必要になった場合でも、URLを共有するだけで資料へアクセス可能です。
資料請求の郵送が不要
電子ブックは制作側の利点だけでなく、スムーズに資料を入手できるという点で受け手にとっても便利です。資料請求を申し込んでから受け取るまで、数日かかるのが一般的ですが、電子ブックは即座に受け取ることができます。例えば製品購入のためのパンフレットであれば、契約の申し込みまでの期間が短くなります。スムーズな意思決定ができることは、利用者と提供者のどちらにとってもメリットです。
作成、公開、修正などが容易
電子ブックは紙の資料と比べてどの過程でも容易に制作を進められます。印刷物ではないためレイアウトや色校正に手間がかからず、制作したファイルを公開設定するだけで誰でもアクセスできるので配布の手間がかかりません。
中でも電子ブックが便利な点は、公開後の修正作業です。通常の印刷物は数百冊、数千冊とまとめて大量に仕上げます。そのため表記の間違いや年度をまたいで更新する必要があるデータなどを掲載していると、過去の印刷物を廃棄して新しく印刷をかけなくてはいけません。
印刷物の場合は修正や更新のために大きな手間がかかりますが、電子ブックであれば、ファイルの一部を修正するだけで、即座に公開している資料に変更が反映されます。
アクセス解析が可能
電子ブックでは、閲覧数や実際にどの程度の人が資料を読んだかデータ計測ができます。ダウンロード数を計測できるPDFなどの資料と比べて、より詳細な分析が可能です。
ユーザーの環境に依存しない(PDFだと見られないケースも)
電子ブックを利用せず、PDFなどの電子ファイルを公開することで情報を提供することもできますが、利用者が使っているスマートフォンやパソコンの種類によっては表示されなかったり、レイアウトやフォントが崩れてしまったりします。電子ブックの場合はブラウザーからアクセスさえできれば表示できるので、使用しているデバイスが原因で閲覧できないという心配がありません。
電子ブックのデメリット
印刷物と比べてメリットが豊富な電子ブックですが、利用に際して注意しておくべきデメリットもあるので、ここで理解して対策できるようにしましょう。
すぐに手渡しすることができない
物理的な資料ではないため、打ち合わせなどで手渡しがしづらい場合があります。資料を渡したい相手がスマートフォンやタブレットの操作に慣れていないと、閲覧までに時間がかかってしまい、ストレスになる可能性を考慮しておきましょう。
例えば営業であれば、事前に営業で取引先に閲覧してもらうために専用タブレットを用意し、打ち合わせ後にURLを送りじっくり見てもらうといった対策ができます。
インターネットに接続しないと閲覧できない
電子ブックはオフライン環境ではアクセスできないため、通信環境が整っていない場合は利用がしづらいです。モバイル式Wi-Fiを持ち歩いたり、他人に見せる場合は事前に重要なページだけキャプチャで画面を保存しておいたりすると良いでしょう。
端末によって見え方が異なる(画面サイズや解像度など)
電子ブックの表示は画面サイズや解像度が端末によって異なります。失敗しがちなものとして、文字サイズや文字の行や段落の組み方で、パソコンから閲覧している分にはきちんと読めるのに、スマートフォンからはとても見づらいことがあります。
また、イラストや写真やグラフなどの画像データの画質にこだわったとしても、利用者は気付かない場合があります。例えば低価格モデルのタブレットのなかには低解像度モデルがあり、画像を細部まで表示できません。逆にiPad Proようなのハイスペックモデルのタブレットでは資料を高解像度で表示するので、画像の粗さが目立つ場合もあります。
電子ブックの作成方法
電子ブックは主に2種類の作り方があります。最適な選択をするためにそれぞれの特徴を確認しておきましょう。
電子ブック作成ツールを使用する
まず電子ブック作成サービスを利用する方法です。PDFなどのデータをもとに作成できます。フォントの選び方やレイアウトなど、デザインに自信がある場合に役立ちます。
専門業者に依頼する
もうひとつの方法は、専門業者に制作を依頼することです。公開用の資料を用意できていない段階から相談できるので、準備ができていない場合でも安心して依頼できます。
電子ブックを作成する際のポイント
最後に電子ブックを作成する際に注意するべきことをいくつか確認します。最低限の知識として、ここだけは理解しておくと安心です。
デジタル環境で見やすいデザインにする
電子ブックのデザインに配慮しましょう。印刷物とは違い、利用者のデジタル環境によって画面の広さや解像度が変化します。スマートフォンでの閲覧を優先するか、パソコンでの閲覧を優先するかなど、目的に応じてレイアウトすることが大切です。
容量に注意
データ容量が大きいほど、表示するまでの時間が多くかかります。画像や動画などを利用して充実した電子ブックを作ったとしても、多様な情報を追加しすぎるあまり表示に時間がかかると、利用者にとっては不便です。利用者は屋内で光回線を利用しているのか、屋外でWi-Fi環境を利用しているのかなど、状況によって適切な情報量は変化します。また、電子ブックのフォーマットごとに容量が制限されていることもあるので確認が必要です。
100%電子ブック化するのはNG
電子ブックは便利すぎるため一見すると万能のようですが、印刷物と併用するとより効果的に利用できます。
利用者の立場からすると、電子ブックは能動的に情報を得やすく、印刷物は受動的値情報を得やすいものです。例えば、電子ブックは情報を得るために特定のURLにアクセスする手間がかかりますが、印刷物はオフィスのデスクや資料棚に置いておけるので、受け取った本人はもちろんそれ以外の人でも手軽に情報を得ることができます。営業ツールとして利用する場合であれば、電子ブックとあわせて印刷物も手渡しておくことで、顧客を得る機会が増えるでしょう。
電子ブックはとても役立つツールですが、資料を100%完全に電子ブックにしてしまうのではなく、印刷物も用意しておくことをおすすめします。
まとめ
ここまでみてきたように、電子ブックの利用は紙を使用した印刷物にはないメリットがさまざまあります。
電子ブックは、資料の構成やデザインが重要となります。プロに相談しながら作成することで、”読み手を意識した”電子ブックに仕上げられるので、任せてしまうのが確実で安心です。