コミュニケーションデザインとは、「自社がどのような形で顧客と関わって行くか?」を主題に捉えて、具体的なアプローチ方法や内容をデザインする考え方です。
従来の一方通行的なマーケティングではなく、「顧客との繋がり(コミュニケーション)」に主眼を置くため、情報過多の現代社会にとても強い概念として捉えられています。
さらにしっかりと理解するためには実際に体験するのが一番です。
当コラムではコミュニケーションデザインの重要性を様々な事例をもとに整理していきますので、一緒に体験してみましょう。
目次
コミュニケーションデザインとは?
コミュニケーションデザインとは、「自社がどのような形で顧客と関わって行くか?」を主題に捉えて、具体的なアプローチ方法や内容をデザインする考え方です。
例えば、皆さんは「百貨店の中で新規開業した洋菓子店」の集客を考えた際、パンフレットを使って集客する場合、どこに力を入れるでしょうか。恐らく多くの方は、表紙のデザインやメニューの画像・店内の様子に意識を傾けるのでは、と思います。もちろんこうした手段も、決して不正解ではありません。
ところがこの洋菓子店は、デザインの出来や写真の質ではなく、「エスカレーターの前」でパンフレットを配ることを最優先事項と定めました。するとどうでしょう…お店はたちまち大盛況!写真も文章も自社制作なのに、多くの集客効果が得られたのです。
当然ですが、これは偶然ではありません。この洋菓子店が「顧客とのコミュニケーション」に成功したからこそ、得ることができた成果です。
ラブレターに例えて考えてみよう
コミュニケーションデザインはよく、ラブレターに例えて説明されます。
ラブレターはご存知の通り、自身の好意を相手に伝える手紙です。しかし相手に応えてもらえるかは、文章の構成や方法・タイミングを通じて「相手との関係を築けているか?」が影響します。
1つの例として「ラブレターを渡すタイミング」を考えてみましょう。内容そのものは同じでも、初対面の方に渡すのと、ある程度親密な関係の方に渡すのでは、得られる結果がまるで異なります。
また、現代社会では「ラブレターを渡す方法」も、以前と比べ多様な方法が選べます。少し考えただけでも、メールや電話・SNSなど、多様な伝え方が思い当たりますよね。
一般的に、ラブレターは「相手と良好な関係を持つ」のが目標です。相手の嗜好や好ましいタイミングなどを分析し、相手が自分の意思で選び取りたくなるような、具体的プランを組み立てます。
コミュニケーションデザインもこれと大きく変わりません。相手との繋がりを重視して、相手とどのように関わって行くのかを、総合的に企画・設計するものです。
コミュニケーションデザインでは、「顧客との繋がり」を目指して総合的に企画するため、下記のような点を具体的に考えてみましょう。
- 内容:イラストや写真・文章はどのようなものにするか?
- 方法:紙媒体からSNS・DMなど、どんな方法が好ましいか?
- タイミング:完成した媒体をどのようなタイミングで発信すべきか?
コミュニケーションデザインが注目される理由
現代社会において、「顧客の関心を掴む」ことは決して容易ではありません。
例えば高度経済成長期の頃は、会社案内1つにしても「自社や商品の魅力をどのようにアピールするか?」が課題の中心でした。当時は情報量が少なく、読んでもらうこと自体は難しくありません。内容の質を高め、写真や映像で読み手の関心を掴めれば、それが売り上げや成果に繋がっていたのです。
しかし現代社会では、インターネットの発達やスマートフォンの登場により、全国・全世界のあらゆる企業が情報発信を行えるようになりました。実際、SNSを開けばたちまちPR広告が表示され、メールを立ち上げれば数えきれないほどのダイレクトメールが山積みです。更にAIの登場により、ユーザーが関心を持ちそうな情報ばかりが24時間発信され続けるようになりました。
既に選択肢は人の処理能力を超えるほど存在し、顧客が関心を持つこと自体が難しくなっているのです。
これでは、どれほど素晴らしい内容の会社案内を作っても、容易に成果は得られません。それどころか、アプローチの方法やタイミングを誤ると、1ページも開かれることなく捨てられることになるでしょう。
現代社会における情報発信の難しさ
- ネットの発達に伴い世界中の企業が競争相手に
- SNSや電子メールすら埋め尽くす、広告過多状態
- スマートフォンの登場により、誰もが多くの情報に触れる社会
「無関心」を「関心」へ
コミュニケーションデザインの導入はまさに、「顧客の無関心」に向き合う方法です。
常に顧客と繋がることを中心に据えているため、ターゲット層の的確な反響効果が期待できます。また目標実現に必要なメディア媒体を選別・伝えるべき内容を構築するため、その後の成約にも繋がりやすい手段です。
冒頭でお話しした「洋菓子店」の例を再度考えてみましょう。
この洋菓子店はパンフレットの質よりも、「エスカレーター前で渡すこと」で、大きな成果を得ることができました。何故でしょうか?
百貨店に来店するお客さんの多くは通常、パンフレットに興味を持ちません。人は興味のない情報に触れても、「手の空いている時」しか読まないからです。
また人通りの多い百貨店では、常に前方に注意が必要です。なんでもないタイミングで渡されても、パンフレットにじっくり目を通す余裕もありません。しかしエスカレーターに乗っている時だけは、話が別です。
自動で移動するエスカレーターの前では、誰もが手持無沙汰の状態です。前方に注意を払う必要もなければ、目を奪われるような商品があるワケでもありません。
結果このお店に関心のない顧客も「自ら関心を持ち」パンフレットも目を通します。それもイヤイヤ見せられるのではなく、自ら進んで目を通しているのです。
この洋菓子店はエスカレーター前に担当者を配置することで、大きな集客効果を得ることに成功しました。これは独りよがりの内容充実よりも、「顧客とどんなタイミングで繋がるか?」を重視したコミュニケーションデザインの成果と言って良いでしょう。
このように、実際コミュニケーションデザインを取り入れていた媒体とそうでない媒体で、明確な違いが表れ始めています。
- 従来型の広告
写真やコピーなど、内容を中心に充実させるスタンス - コミュニケーションデザインによる広告
顧客が自ら選び取りたくなる、顧客との繋がりを重視したスタンス
コミュニケーションデザイン活用事例
コミュニケーションデザインの魅力や重要性を、ご理解いただけるようになったのではないかと思います。続いて顧客との繋がりを持った成功事例を見て行きましょう。
食材そのものをブランド化してアピール
ある食品会社では「新商品の販売」という目標に対して、コミュニケーションデザインを取り入れ、マーケティング戦略を練りました。
その会社が採った方法は、商品に使っている「ショウガ」自体のブランド化。顧客がショウガに対してポジティブな印象を持つことで、商品に対しても「自ら関心を持つ」ことになるからです。
通常商品のアプローチ方法は、CMや広告紙面によるアピールが採られます。しかしこの会社はショウガの印象アップから入るために、ショウガを使ったレシピ動画を公開したり、試験農場の開設や研究機関との共同研究に注力します。回り道に見えますが、商品そのものではなく、ショウガという食材からアピールするスタンスを取ったのです。
その結果、これらのメディアから自社商品に向けて、多くの流入効果を得ることに成功しました。また顧客から好印象が得られたころに広告やCMを打つことで、より多くの販売記録を達成することに成功しています。
100年先も愛されるデパートとは?
「100年先まで愛される企業」という要望のもと、デパートのマーケティングを展開した事例です。
口に出すのは簡単ですが、「100年先」は容易な話ではありません。チラシ広告やCMを打てばある期間の収益アップは可能でしょう。また新規店舗を立ち上げたり、キャンペーンを仕掛けても、相応の成果は期待できます。
しかしこれらの方法では、決して「100年の愛」を得ることはできません。CMはいつしか忘れ去られ、キャンペーンもいつしか陳腐化するからです。
そこで担当者は、「人材改革」に注力することにしました。企業においては、人もモノも事業も、常に変化を続けます。しかし企業に根付いた文化だけは、不変不動のものとりなり得ます。
担当者が採った改革の一例
- 新しいアイデアを出せる人材の育成
- 社内評価の改善を提案
- 社内コミュニケーションの改革
このように、企業の中で「人材が活躍できる場」を生み出すことで、長く愛され続ける環境づくりを手掛けたのです。無論企業の中で働く人材も、いつしか入れ替わりを迎えます。しかし社内の文化や環境はその後も残り続け、営々と息づいて行くでしょう。
会社案内にコミュニケーションデザインを取り入れるメリット
コミュニケーションデザインは、あらゆる広告・マーケティングにおいて活用できる概念です。会社案内やパンフレットにも、取り入れることで大きなメリットが得られます。
会社案内にコミュニケーションデザインを取り入れるメリット
- 反響率アップ効果
- 自社に対する印象の向上
- ムダなコストの抑制
1. 反響率アップ効果
コミュニケーションデザインは「顧客との関わり方」を重視する分だけ、非常に高い反響率を期待できます。
ユーザーに受け入れられやすい方法やタイミングを狙うので、無視されてしまうリスクを抑えることができるからです。
2. 自社に対する印象の向上
コミュニケーションデザインは、「顧客が自ら関心を持つ方向」に持っていくことを目指して、方法や手段・タイミングを練り上げます。
無理矢理・イヤイヤ読ませるわけではないので、「あのしつこく・鬱陶しい会社」といったマイナスイメージを抑制する効果が期待できます。
3. ムダなコストの抑制
デザイン会社の中には、美麗なCG・写真の挿入や、有名タレント・Youtuberなどのインフルエンサーばかりを進める企業も存在します。確かにこれらはPR方法として非常に有効な手段です。
しかし導入には相応の費用が掛かり、大きな負担となり得ます。また本当はそこまでのコストをかけずとも、もっと良いアピール方法があるかもしれません。
コミュニケーションデザインでは、あくまで「顧客とのつながり」を重視します。美麗なCGやインフルエンサーの起用も、目的達成のための手段の1つでしかありません。結果としてコストの抑制に繋がるケースも多く、非常にコストパフォーマンスにも優れています。
まとめ
広告媒体の作成時はつい、画像や動画の見せ方などの内容や、SNSやDM・紙媒体などの方法にばかり注意が行ってしまいます。
しかしコミュニケーションデザインを重視する場合、これらは最優先事項ではありません。それどころか、複数の媒体の相乗効果を狙うクロスメディア・マーケティングや、インフルエンサーなどを利用したバズ・マーケティングすら、目的達成の1手段に過ぎないのです。
コミュニケーションデザインでは常に、顧客との関わり方を大切にし、「顧客自ら関心を持ってもらうこと」を重視します。そして情報の溢れた現代社会において、最も効果的なアプローチ方法の1つとして、次第にその存在感を増しています。